
| 水口靖男 | 関内中央社会保険事務所国民年金課係長 |
| 皆川結子 | みなとみらい総合病院看護師 |
| 織田祐一郎 | みなとみらい総合病院心臓外科医 |
| 藤原公平 | マスコミ・放送界の重鎮 |
| 織田五郎 | 日本医師会長 |
| 江田裕介 | 神奈川県警刑事部長 |
| 立石賢治 | 神奈川県警刑事部参事官 |
| 山根欽四郎 | 神奈川県警刑事部捜査一課刑事 |
| 三枝勉 | 神奈川県警刑事部捜査一課刑事 |

西川三郎 にしかわさぶろう

1948年愛媛県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、大手生命保険会社に入社。 91年、マルチメディア情報通信関連の中堅エンジニアリング会社に入社。取締役企画室長、代表取締役専務を経て、 1999年12月、技術系派遣会社、ジャパニアス株式会社を創業。世界をリードする日本メーカーの製品づくりの支援をする。横浜市在住。
幼い頃より小説を愛し、執筆を続けて、 1996年、生保業界を舞台にした企業ミステリー『凍える豹』でデビュー。ミステリーファンの熱い支持を得た。著書に『沖縄の虎』『ビックバン・ウォーズ 金融・生保最後の選択』『小説家の経営術』がある。

容疑者は千人!? 保険獲得競争、派閥抗争、報復人事……。苛烈な生保業界を舞台に、勝たねばならない男たちの哀しさと、彼らを支える女たちの愛憎が交錯する企業ミステリー。
少女暴行事件から一年。揺れる沖縄に立ち上がった犯罪集団「沖縄の虎」。法に背くこと、闘い続けること以外に生きられない男たちの姿を描いた政治犯罪小説。大型新人が満を持して放つ第二弾。
金融ビッグバンを迎え日本経済は激動期に入った。次代の覇権を狙い、生保と財閥銀行の野望と威信が大激突する……。元大手生保勤務の著者が大胆な発想で時代が求める企業を描く衝撃の戦略企業小説。
先行きが見えない時代、経営者に必要な「小説家的想像力」とは何か。経営に必要な5つの視点を、著者の実体験に基づく方法論で解説。一見相反する「ビジネス」と「小説」の共通点から見えてくる人と企業のストーリーの本質に迫る!

――11年ぶりの新作ミステリーを書き上げた気持ちは?
10年間の企業家としての営為が作品に反映され、登場人物に深みと陰影がでてきたような気がします。
社会に翻弄される人間の痛みと哀しみが掬いとれたかもしれません。今後の作品を紡ぐ糧となったのは収穫でした。しかし、作品をものするには大変なエネルギーを消耗し、「二足の草鞋」を履いている私には過酷な試練であり、創作の喜びの裏に潜む苦しみをかかえながら上梓した達成感には格別なものがあります。企業活動も創作行為もささやかな果実があれば続けていけます。言いかえれば犬は飼い主に頭を撫でてもらうだけでうれしいのです。すべての営為は過去の投影から生まれます。人間はいつしか芽生えたテーマを終生引きずって生きていくことになるのです。やさしくて辛辣な読者から勇気をもらえれば幸いです。
――『瘤』の登場人物は皆、その人なりに真面目に生きています。
そんな普通の人たちを描いた理由は?
市井で真面目にコツコツと働いている人間に魅力があるのです。人間の内面に高尚も下品もありません。外見だけの人間が滅びていくことこそカタルシスだと思っています。ささやかな衣食住さえあれば動物と同じく人は生きていけます。欲というコロモを剥ぎ取れば人間は生身の裸でしかないのです。しかし、その裸には「こころ」という厄介な屈託が潜んでいます。恨み、嫉妬、差別という葛藤が暴れだすと、時として自己制御がきかなくなります。「一寸の虫にも五分の魂」です。人を見下すことは恐いことです。恨みは永く沈殿しています。これはもう復讐というより人間存在そのものに化けていくわけです。真面目な人間のエネルギーは劣等感です。このやるせない感情が凶暴な行動の引き金になっていくのが現実ではないでしょうか。
――ミステリーを書き続ける理由は?
現実はさして面白くはありません。虚構に凝縮された人物は活き活きと動きだし、時に感動さえ与える人間に変貌します。そこに「枷」をはめてやれば、もがき苦しみながらも終末にむかって進んでいきます。裁きという過酷な結果を畏れない衝動にかられるわけです。結末は結果ですが、結果に善し悪しなどあるわけがありません。人は動機で生きているのです。動機こそが人間にそなわっている厄介な代物だともいえるわけです。ミステリーはそれを炙り出す格好の手法だと思っています。人は事件がなければ本性など見せなくても生きていけます。日常生活において人は本性を隠して生活しているわけです。いらぬ社会との摩擦など避けたほうがいいに決まっています。「逃げるが勝ち」を赦さないのがミステリーだと私は思っています。
――読者へ向けてメッセージをお願いします。
ミステリーの魅力は読者と結託することです。作者はそこに全精力を注ぎ込むわけです。
登場人物の誰一人も無駄には扱えません。仕掛けは完璧でなければなりません。そこに作者の技が問われるのですが、これも読者との協同作業がうまくいかなければ空転します。つまり感情移入と作中人物との同化です。本著『瘤』の主人公たち、事件の展開などに現代を投影したつもりですが、改めて現代という時代が閉塞感に苛まれてきたと思うのは私だけの感慨でしょうか。インターネットや携帯電話という仮想に便利さとは違う無機質さを感じざるをえません。しかし、いつの時代にあっても人間という「一個」がささやかな主人公であることに変わりないのもまた事実です。科学技術の発達は捜査には好都合ですが、犯行には厄介です。でも、そこにまた現代ミステリーの面白さもあるのではないでしょうか。