2009年8月27日
私が弊社の代表になり三年が経ちました。思い返せば就任直後初めて自費出版の世界をみて、いちばん驚いたことはその刊行点数の異常な多さでした。案の定、大手といわれていた一社はその後しばらくして悲惨な末路を辿り、純粋に自費出版を望んでいるたくさんの人々に不信の芽を植え付けました。はたしてこのような従来の自費出版の形態が健全な出版といえるのだろうか、構造的な問題があるのではないか、改めて抱いたそんな疑問から私たちの新たな取り組みは始まりました。社内で議論を尽くした結果、至った結論は極めてシンプルなものでした。「良い本を作れば、周りは必ず応えてくれる」。そして誓ったのです。「日本一、質の高い自費出版本を出す会社にしよう」と。
その後自費出版を希望する多くの著者の方々に出会いました。そこで改めて感じたのは「書かざるを得ない何かを抱えて生きている人たちがこんなにも多いのだ」ということでした。人生の終着点が死である限り、私たちはみな不安、絶望、恐怖を背負って生きています。その思いに対処する方法は人それぞれですが、それらと向かい合い、思索し、その痛みを少しでも和らげる行為のひとつが「表現」なのです。逆をいえば何の不安もなく、十全に生きている人に表現は必要ないでしょう。私たちの仕事は、皆様のそんな「心の在り方」を文章という形に置き換える行為のお手伝いをすることです。
しかしこの作業は生易しいものではなく、片手間にできることでもないのです。お互いの決意と信頼が必要であり、当然量産できる類いの仕事ではありません。単に紙に文字が印刷され、カバーが付いたものが本ではないのです。私が本当に残念に思うのは、安易な自費出版本が多いことです。もう少し踏み込んだ編集という工程を加えればいいものになるのに、そこを端折る。これでは折角の作品の芽を摘み取っているようなものです。その証左が夥しく出される自費出版本の数です。重ねてもう一度言います。人の精神を形にして世に送り出すのはそんなに簡単なことではありません。
もし可能であるなら一度弊社にお越しください。私たちのオフィスには今まで刊行してきた本を一堂に陳列している書棚があります。一冊一冊が著者の方々の人生であり、私たちの誇りです。論より証拠、ここに全ての答えがあります。
弊社のその陳列棚には実にいろいろな種類の本が並んでいます。恋愛小説、ミステリー、エッセイ、ビジネス本、詩集、俳句集、写真集、絵本……。そしてそこに8月からさらに新しいジャンルが加わることになりました。それが「幻冬舎ルネッサンス新書」です。
最近、もっとコンパクトな形でスピーディーに出版できないものかというお問い合わせが急増しております。しかもその内容の多くはベイシックな教養に裏付けされた、今の時代だからこそ活きる斬新なテーマ性をもったものでした。それにお応えするには新書という形態が最適だと考えた次第です。「幻冬舎ルネッサンス新書」を新たな表現の場として活用していただけるよう、力を注いでまいります。
本を出した著者の方から手紙をいただくことがあります。先日は「自分の生き方を見つめ直してみて本当に良い経験ができた。これからの人生が違ったもののように思える」という感想が寄せられました。このような手紙に、私たちは最大の喜びを感じます。これこそが本を出す意味であり、出版社としての責任を全うできたと実感できるからです。今後もこんなお手紙をいただけるような出版活動を続けていく所存です。


