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見城徹(以下、見城) この上期は、幻冬舎で文庫版『氷の華』が32万部のヒットを記録したわけだけど、この素晴らしい作品は、そもそも「個人出版」の幻冬舎ルネッサンスから誕生しているんだよね。
小玉圭太(以下、小玉) 最初に『氷の華』を読んだときは、こんなに質の高い作品が「個人出版」で出てくるのかという驚きと、それを自分の会社から出版できたということでとても興奮しました。それですぐに、出版・映像の関係者に見本誌を送って、「とにかく読んで欲しい」と働きかけたんです。
見城 そのうちに、僕の耳にも評判が聞えてきたんだ。僕も驚いたよ。松本清張の再来かと思わせるくらい、力のある作品だった。それで幻冬舎から、商業出版として単行本化しようと決めたんだ。すると、一気に映像化の話が熱を帯び始めた。
小玉 各局からお話をいただきましたが、結果的にはテレビ朝日の「開局50周年作品」として2夜連続で放送されました。視聴率も初日16.8%、2日目18.0%と上々で。
見城 ここに至るまでの経緯を考えると、これは本当に驚くべきことですよ。
小玉 正直に言って、2年半前に突然、幻冬舎ルネッサンスの社長になり、その直後は途方にくれていました。何から始めればいいのか、どこを目指せばいいのか。そんなとき、この『氷の華』の見本が上がってきたんです。夢中で本を読みながらも、「幻冬舎ルネッサンスから個人出版されたものが、幻冬舎文庫にラインナップされる……という流れができたら、面白いビジネスモデルになるんじゃないか」という新たな計画に、思いを巡らせていました。それがこんなに早い時期に実現するなんて、僕は本当に幸運だと思っています。
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見城 表現したい欲求というのは、誰しもがみな持っているものだと思う。でもやはり、作品があるレベルに達しなければ、それを本にしても、読者には喜んでもらえない。いくらお金を積んでいただいても、そのレベルを超える作品でなければ、幻冬舎ルネッサンスから出版するわけにはいかないよね。
小玉 就任当初から、そういうスタンスでやっています。だけど、「どうしても本を出したい」という、止むに止まれぬ衝動を持っている人もいる。そういう場合は、編集者が徹底的に著者をサポートして、より良い作品にしようと懸命に闘います。
見城 それはもう、我々幻冬舎の編集者が、作家をサポートするのと同じ世界だね。商業出版としてもベストセラーになりえた『氷の華』という作品が幻冬舎ルネッサンスから生まれてきたというのは、作品の質を追い求める強みが鮮やかに表れた出来事だったと思います。やはり、書籍ビジネスの根本は、力のある作品をどう生み出すかということだから。

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小玉 いまも素晴らしい作品が上がってきています。『ヴァネッサの伝言』という400ページほどの長編小説は、社内でとても評判が高い。また、『お菓子の由来物語』も、売れている作品です。この作品は、お菓子の名前や形の由来、現在に至るまでの変遷や、歴史上の人物との関係をまとめたもので、掲載されているお菓子も写真も、ほとんどが著者自身の手によるものです。
見城 本当にすごい出来だよね。『お菓子の由来物語』は、食専門の出版社が出しているようなクオリティだし、『ヴァネッサの伝言』はカバーやイラストも力強くて素晴らしい。こんな「個人出版」の本はなかなかないよね。
小玉 『2007 出版指標年報』を見ると、出版社別の新刊点数の上位3社のうち、2社が自費出版の大手で、年間合計約4千点も刊行していたんです。この数字を見て、僕は気づきました。何も悩むことはない、僕らがやるべきことはシンプルじゃないかと。右から左に、内容を吟味せずに、ただただ冊数を増やすような本作りはしたくない。幻冬舎らしく、いままでどおり一冊一冊、良い作品を作ることこそが、他社との決定的な違いになりえると確信したんです。
見城 他社の自費出版とは、まったく違うクォリティレベルを目指すことそのものが、違いになるわけだ。
小玉 社内でその思いが共有され出すと、すぐに影響が出ました。おととしは25点に1点だった重版の割合が、去年は10点に1点になった。それは作品の質の向上と、営業局が一冊一冊配本して、きちんと書店で売れているということの証明だと思っています。
見城 当然だけれども、商業出版に劣らないクォリティを示せば、「個人出版」でも重版はかかる。
小玉 いままでの自費出版は、作り手が満足すればそれで良いという世界です。でも僕らが目指しているところは違う。作り手も喜んで、読者にも喜んでもらえる作品を作るのが僕らの使命です。そうして、ともすれば偏見を持って見られがちな「個人出版」のイメージを変えたいと思っています。
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見城 『氷の華』のような飛び切りの作品も、そうした中から生まれえるわけだからね。そして、商業出版として、幻冬舎から単行本化、文庫本化されていく。そうなれば幻冬舎自体の利益にも貢献するし、当然、幻冬舎ルネッサンスにも、そして著者にも還元される。まさにウィンウィンの関係だよね。
小玉 我々の働きで幻冬舎のビジネスにも貢献できるということを、誇らしく思っています。
見城 幻冬舎ルネッサンスの存在は、幻冬舎グループのコンテンツ、その幅と質を豊かにしてくれるものだと思いますよ。これからも、できるだけ多くの作品が、幻冬舎に移行されるようになってほしいね。
小玉 そこを目指して、一冊一冊、磨き上げていきたいと思います。
見城 この流れが確立すれば、「個人出版」が作家を見出すための文芸誌や新人賞と同じ意味を持ってくる。我々は、『パピルス』という文芸誌の他にも、幻冬舎ルネッサンスという、作家を見出す器を持ったんだね。ここから作家と編集者の関係、作品と出版社の絆が育まれていくというのは、本当に理想的ですよ。
小玉 これからも『氷の華』のように、力強い作品を生み出していきますので、どうぞご期待ください。

